早稲田大学演劇博物館所蔵 012−0703 依智三郎中村勘五郎 日蓮上人登り 中村福助

歌舞伎
「日蓮」

御仏(みほとけ)の御教(みおし)えに愚直にも随順(ずいじゅん)し、
襲い来る法難(ほうなん)を物ともせず、
身命(しんみょう)すらも御仏に捧げ、その人生を駆け抜けた聖者(せいじゃ)日蓮(にちれん)。
スーパー歌舞伎II『ワンピース』を手掛けた脚本家・横内謙介氏と歌舞伎俳優・四代目 市川猿之助氏がタッグを組み、
その崇高な御姿が歌舞伎として、現代に蘇えります。

「日蓮」歌舞伎とは

2021年6月、歌舞伎界の実力者が「日蓮」を演じる!
日蓮聖人のご生涯を斬新な発想でどのように表現するのか …公開が待ちきれません。

四代目 市川猿之助 (よだいめ いちかわ・えんのすけ)

立役から女方まで幅広く活躍。確かな実力で、最も目が離せない歌舞伎俳優の一人。叔父・市川猿翁(三代目猿之助)は昭和に一時代を築いた「スーパー歌舞伎」の創始者。斬新な企画力と身体能力の高さで、たちまち人気を博した。そのパイオニア精神を受け継ぐ澤瀉屋の若きリーダーが「四代目市川猿之助」。スーパー歌舞伎II『ワンピース』を成功させたプロデュース能力もさることながら、『義経千本桜』では当り役の狐忠信以外にも、典侍の局、娘お里というキャラの違う役を演じ切る。『荒川の佐吉』では人生の哀感を見せ『黒塚』などの舞踊も抜群。

日蓮聖人と歌舞伎の歴史

江戸時代、池上本門寺のお会式は江戸の風物詩として知られ、全国からの参拝者で品川宿から本門寺まで参詣の行列が出来ていたそうです。それに合わせ日蓮聖人の御一代記などの歌舞伎を公演するのも風物詩の―つのようでした。10月〜11月は日蓮歌舞伎、11月〜12月は忠臣蔵を行うのが、年末歌舞伎の恒例の公演だったそうです。
日蓮聖人を題材にした文化芸能は、歌舞伎や狂言、浄瑠璃などを通し広く庶民に親しまれ、絵画などとも混ざり合い、江戸庶民に身近な娯楽として好まれ広まっていたようです。平安時代では、貴族に法華経を分かりやすく伝える為に、能の舞台が用いられたそうですが、江戸時代には、人気の歌舞伎役者が演じる事で、日蓮聖人や法華経の教えも、庶民に身近に親しみやすい存在となり、大いに広まった事でしょう。
近世では、九代目團十郎が日蓮聖人を演じ「動かぬ所作」の名演を見せ、大信者であった中村福助に於いては、歌舞伎の花道に姿を見せただけで賽銭が投げ込まれた逸話もあります。また、森鴎外作の「日蓮聖人辻説法」や「日蓮記」「日蓮大菩薩真実伝」「史劇日蓮聖人」「龍ノロの日蓮」などなど、様々な方が、日蓮聖人を頴材に脚本をかいています。
他にも歌舞伎の演目の中には、加藤清正公がお題目を唱える場面や、身延山参拝の一幕など日蓮聖人だけでなく、人々の信仰に根付いた演目も多く、広く人々に受け入れられていたことが伺えます。
また江戸の旅芸人が身延山参拝の帰りに四条金吾ゆかりの内船に立ちより、歌舞伎を伝授したことにより内船歌舞伎がはじまりました。歌舞伎の演目内だけなく、実世界でも日蓮宗と関わり深く、信仰と芸能と深く滉ざり合い一つの文化となっていたようです。
今般の日蓮歌舞伎を通じて、庶民に愛された親しまれた日蓮聖人を楽しく分かりやすく感じていただき、皆様に楽しんでいただけましたら、日蓮聖人降誕800年の慶事節目より始まる、あらたな令和の文化歴史となる事と思います。

対談 「日蓮」歌舞伎について

横内氏この度、令和3 年6月歌舞伎座「六月大歌舞伎」の1 演目『日蓮』の脚本・演出を担当することになりました横内と申します。私事ですが、父はお経を自分で読むくらいの熱心な日蓮宗の檀信徒でした。私自身も幼い頃に父に連れられ、この身延山を参拝したことがあります。今日、内野法主猊下にお会いする前に、菩提梯を登ったのですが、その時の記憶が甦ってきました。疲れましたが、修行をさせてもらえたと思い、嬉しい気持ちです。

内野法主猊下それは大変なご縁だと感じます。日蓮宗とご縁がある横内先生が脚本を書くことに決まっただけで期待してしまいます。さらには市川猿之助さんという素晴らしい役者さんを迎えられたのも本当にありがたいことです。聞くところによりますと、今回の歌舞伎の公演が決定するまでに関係者の方々の並々ならぬご苦労があったそうですね。だからこそ日蓮聖人のお導きがあり、横内さんや猿之助さんと強いご縁が結べたのだと強く感じている次第です。

横内氏私もそう感じています。お話自体はずいぶん前にいただいたのですが、2年後のことは今は決められず、スケジュール感の違いを感じました。でも私は先ほどの父の話もありますし、ご縁は感じていました。また猿之助さんも仏教や仏像に造詣が深い方なので、宗教家を演じることに興味を持っていたようです。

持田総務かれこれ約40年前、私は日蓮聖人第700 遠忌でいろいろと行事を企画実行する報恩奉行会の事務局長を務めておりました。そのときには前進座劇団に嵐圭史さんを主演に「日蓮」を公演してもらいましてね。全国を巡って公演して、すごく評判が良かったことを昨日のように覚えています。今回の歌舞伎も楽しみにしているのですが、演目の内容はもう考えていらっしゃるのですか?

横内氏まだ日蓮聖人のことを学び始めたばかりで、何も見えていません。ただ、先日、身延山大学の木村中一教授に日蓮聖人の伝記などの指導を受け、実にドラマチックな生き方をされた方なんだな、ということは感じました。例えば大きな法難に何回か遭われましたが、そういった場面はお芝居にしやすいのではないかと思っています。今回の演目は猿之助さんと一緒に作り上げていくと思うのですが、もともと澤瀉屋一門は、外連といって、奇抜な演出を得意としています。あとは早替りとか一人七役とか。一人の役者が男にもなるし、お坊さんにもなれる。お客さんを退屈させない、そういったところが日蓮聖人のドラマチックな人生はすごくマッチするのではないかと思います。最近は新しい技術も増えているのですが、古い技術にはテンポ感が出て、そういった演出を上手にミックスさせたり、取り込んで芝居を作っていければと考えています。

内野法主猊下そういった話を聞くと、ますます横内さんを迎えられて良かったと思います。実は身延山では現在、共生共栄運動というものを展開しておりまして、事業の1つとして日蓮聖人のオペラを制作しています。持田総務が何度も作詞家とやり取りして、練り上げているものですので、ぜひ参考にしていただければと思います。

持田総務音楽布教の導入というものを進めておりまして、その一環としてのオペラです。日蓮聖人は強い僧侶として描かれることが多いのですが、私が表現したかったのは、いつも誰かに心を寄せる日蓮聖人です。お祖師さまはそういた面を多く持っていらっしゃったのに、世間の人には浸透していません。そのような部分も横内さんに知っていただければと思います。
また日蓮宗には昔から高座説教とう伝統があります。僧侶が高座に座って笏を叩いて講談のような「繰り弁」という説法をする文化があります。日蓮聖人のご一生の場面がすべて高座説教にはありますので、これもぜひ参考にしていただければと思います。

横内氏日蓮宗にそんな文化があるんですか?ぜひ参考にさせていただきます。オペラも制作中なんてすごいです。20年も前から歌舞伎の脚本を書かせていただいていますが、本当は専門ではないんです。でもおかげさまでスーパー歌舞伎II(セカンド)として書き下ろしたマンガが原作の『ワンピース』も大変好評を得ました。ぜひ同じように話題となって、日蓮聖人の魅力を知ってもらう作品に仕上げていきたいと思います。

内野法主猊下ご期待申し上げます。観客の方々に日蓮聖人の御心が伝わり、胸を打つような演を楽しみにしています。身延山を代表して心からお願い申し上げます。

横内氏はい、頑張りたいと思います。本日はありがとうございました。

横内謙介 (よこうち・けんすけ)

1961 年9 月22 日、東京生まれ。劇作家・演出家。劇団「扉座」主宰。神奈川県立厚木高校在籍時、名義貸しで演劇部に入部。先輩に奢られ、つかこうへい事務所の「熱海殺人事件」を観て芝居に目覚める。処女作「山椒魚だぞ!」にて演劇コンクール全国大会出場。1982年、早稲田大学第一文学部在学時に、厚木高校演劇部員だった岡森諦、六角精児、法政二高の部員だった杉山良一らと劇団「善人会議」を旗揚げ。’93 年「扉座」と改名、現在に至る。劇団活動とともに、スーパー歌舞伎、ミュージカルなど、外部への作品提供多数。’92 年、第36 回岸田國士戯曲賞を『愚者には見えないラマンチャの王様の裸』で受賞。’99年スーパー歌舞伎『新・三国志』で大谷賞を史上最年少で受賞。2015 年スーパー歌舞伎II『ワンピース』で大谷賞を再び受賞

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観劇のマナー

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すべての人の苦しみを除き、喜びを願う気持ち。これは、仏教徒の基本精神です。日蓮宗では、このように他者の幸せを願い、そのために自らが行動する慈悲の精神にのっとり、社会活動を支援しています。
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